「パワフルな女性は、どんな社会でも脅威的存在だから、私はいつでもバッシングの対象になる。そういう構造の全てを私は破壊したいし、終わらせたいと思ってる。」


■あなたは自分の曲が過小評価されていると思いますか?
「ちゃんと聴いている人は過小評価したりしないわ。でも残念ながら、あたしのキャリアやあたし自身を巡ってあまりにもいろんなことがあるから、そのせいでみんな、実際の曲の内容から注意がそがれてしまうのよ」

■「Yo'll See」は復讐の歌?
「いいえ、あの曲は自分自身に力を与えるという歌よ。「Take A Bow」のような曲も好きだけど、あの曲と同じように、「You’ll See」の歌詞も、あたしの性格のほんの一面を反映してるだけだわ。あたしって、ものすごくマゾヒスティックで、愛のためなら実際何でも喜んでやっちゃうような面があるの。でも、一方では、「構わないでよ。あたしは誰も必要としていない。あたしには自分の望み通りのことができるの」っていう別の側面もあって、「You’ll See」はそれを反映した曲なの」

■年を取るにつれて気難しくなってきていると思いますか?
「いいえ、賢くなってきているだけよ。あたしが年を取って気難しくなっている、っていうレヴューを幾つか読んだけど、あたしはまったくそうは思わないわ。確かに、人生や愛について少しシニカルにならざるを得ないとは思うけど、あたしは今でもロマンチストだし、今でも理想主義者よ。簡単に恋に落ちちゃうし、だから気難しくなってるとは全然思っていない。結局これも、あたしの人格やあたしの発言を密かに傷つけたい人たちの言い種の一つに過ぎないのよ。ものごとを表面的に考えずにいられない人っているのよね。あたしのライフスタイルを見て『ああ、何て楽な人生を送ってるんだ!』って言うような奴を、あたしは心底嫌っているの。まるであたしが生まれてきた時からこういう生活をしていて、一夜にして成功したみたいな言い方をして・・・・・・馬鹿馬鹿しい!こっちは必死で働いてんのよ。ものすごく大きなファン基盤を持つアーティストから、ものすごく大きなファン基盤を失ったアーティスト、そしてある種変動の激しいファン基盤を持つアーティストまで、全部経験したわ。あたしに惚れこんでいるコアなファンというのはいつも必ずいるんだけど、その時あたしがやっている音楽の種類によって、ある一定の集団からは人気を得るけどそれ以外の人たちは遠ざけてしまう、という結果になるの」

■そういう状況はじれったいですか?
「いいえ。確かに昔ほど人気はないかもしれないけど、逆にみんなもっとあたしの音楽に注目して、あたしのことをアーティストとして尊敬してくるようになってきてるから」

■これまでに一度でも尻込みしそうになったことはありますか?
「もちろん(笑)。レコードを出すたびにパニックに陥ってるわ。アーティストなら誰でもそうじゃないかしら。レコードがナンバー・ワンになる度に『んー、最高な気分だけど、多分もう二度とこんなことはないんだわ』って思うの。永久に終わらないのよ」

■それは無意識なものなんですか?
「自己疑心が?ええ、あたしの場合はそうよ。」

■マーヴェリックについて
「すごい額のお金を無駄にしたわよ。でもそういうもんでしょ。人は失敗から学ぶものよ」
(マーヴェリック設立以来、大金の絡んだ数々のアーティスト争奪戦を闘って破れ、アーティストの勧誘に失敗)

■英国のアーティストにかなり興味があるようですね
「そう、すごく気に入っているアーティストのほとんどが英国人よ。たとえば・・・まあ、ビョークは英国人じゃないけど、英国から出てきたでしょ。彼女は本当に独創的で。まったくユニークでかわいらしいわ。あたしには彼女の持ち味を的確に指摘することができないんだけど、逆にそういうところがいいんでしょうね。彼女って本当にユニークだわ。信じられないくらい。PJ・ハーヴェイも大好きよ。彼女の書く歌詞は素晴らしいと思う。彼女って本当に苦悩に満ちてるでしょ。あたし、いつも苦しんでいる人に心が惹かれるの。だから、彼女やシンニードの大ファンなのよ。苦悩しているすべての女性アーティストの大ファンなの」

■ポップ・ミュージック界で成功した他の女性(ホイットニーやマライヤたち)は、何故自分が信じていることのために声を大にして発現しないのでしょう?
「まず、“ポップ”って、“ポピュラー”の略語でしょ。そして、ずっとポピュラーでいたいのなら、意見を持ったり率直にものを言ったりしちゃいけないのよ。ポピュラーでいるためには、人を怒らせるようなことをしちゃいけないの。ジャニス・ジョプリンだって、今のこの時代のこの世の中では“ポピュラーな”アーティストにはなれなかったでしょうね。クリッシー・ハインドだって、マライア・キャリーみたいにレコードが売れているわけじゃないし。そしてこれは、マライア・キャリーやホイットニー・ヒューストンが、意見ってものをクソほども持っちゃいないからなのよ」

■ホイットニーはあなたに関して意見を持ってるでしょう?彼女は、自分の子供があなたのようになったら生かしちゃおかない、って言ってたじゃないですか。
「あたしは、二人があたしのことをひどく言ってるのを聞いたことはないわ。でももし何か言ったとしても、その理由は明らかよ。あたしが意見を持っていることへの嫉妬から、そういうことを言ったのよ。でもあたしはアーティストたるもの、意見を持つ義務があると思ってるの。社会はポピュラー・アートに手引きを求めるものよ。人は何か頼れるものを必要としているの。自分があるものを嫌悪しているのかそれともすっかり惚れこんでいるのかと、疑問を抱かせてくれる何かをね。だからマライア・キャリーなんかは、自分にもそういうことができればって願ってる。だけどその一方で・・・・・・ものすごく頭のいい人間でなきゃそんなこと真面目に考えもしない、とも思うのよね」

■あなたは、一定の次世代の女性アーティスト、特にコートニー・ラヴが、あなたのことを公然と非難した理由について「ただ自由が欲しいからよ・・・・・子供が親から独立したいと思うようにね。と語ったことがありますね。彼女は何故あなたのことを、こういう“ひどい母親”的な人物として見るのでしょう?
「それは、あたしが彼女たちのために道を開いてやったからよ。コートニー・ラヴやリズ・フェアのような人たちのために、あたしが道を開いてやったのは確かよ。ちょうど、デビー・ハリがあたしのために道を開いてくれたようにね」

■でもあなたはデビー・ハリーを非難したりしましたか?
「いいえ、でもあたしは麻薬中毒者じゃないし自分を嫌ってもいないけどね。あの頃の例のオルタナティブ・シーン、ジェネレーションX・シーンって『成功なんてくそ食らえ、80年代なんてくそ食らえ、金持ちなんてくそ食らえ、体制なんてくそ食らえ!』ばかり言っていた。だけど結局、そんなものはまったくの偽りなのよ。コートニーだって反体制なんかじゃ全然ないわ。だってあの娘ったらシャルル・ジョルダンの靴を履いて、プラダで買い物をしてるのよ。だから全部、聞こえのいいだけの戯言なのよ」

■“こともあろうにコートニーがマドンナに歯向かうなんて。彼女こそ何らかの形でマドンナに共感を覚えてもいいようなものを”と思った人もいるでしょうにね。
「ええ、でもコートニーって本当に哀れな人なのよ。契約しようとして彼女と会った時、あの娘ったら最初から最後までずっと自分の夫のことをこき下ろしてたのよ。『ホールはニルヴァーナよりずっといいバンドなんだからね』なんて感じで急に話が脱線しちゃうんだから。とにかく話すのが好きなのね、あの娘。喋ってることの半分も本気で言ってやしないのよ。ただ、信じられないくらい他人と競争するのが好きで、成功した人間は誰でもこき下ろそうとするの。それだけのこと」

■「あの女は吸血鬼よ。あたしから最後の1セントまで搾り取るつもりなのよ」という彼女のコメントには腹が立ちました?
「もちろんよ!だって朝の3時にうちに電話してきて、いかに女性は団結しなきゃならないかだの、いかに自分はあなたが経験してきたことを称賛して尊敬してるかだの、脱線しまくりながら喋り続けたのは彼女なのよ。するとその次にはくるりと意見を変えてああいうことを言うでしょ。こっちはもう『ああ神様!この娘、完全に狂ってるわ!』って感じ」

■彼女に降りかかった悲劇については、同情を感じますか?
「あたしがコートニーに同情を感じるかですって?・・・・・・。彼女が明らかに愛していた人を失ったことは気の毒だと思うけど、でもあれは誰も驚くような事件じゃなかったわ。あれだけ大量のドラッグをやってたら、後は時間の問題でしかないじゃない。あたしの言ってることわかる?それに、この際現実を直視しましょうよ。あの娘が今ああいう状況にいるのは、彼女が自分でそうしたからよ。彼女は犠牲者なんかじゃないわ。コートニーにおきていることはすべて、彼女が自分で招いたことよ。だから、彼女に同情するのはあたしにはかなり難しいわ」

■彼女ももう少しちゃんと振る舞えたんじゃないかと思いますか、つまり・・・・・・。
「威厳を持って?ええ、思うわよ。でももう一度言うけど、あの娘は今、四六時中ラリってるせいで判断力が鈍っていると思うの。確かに辛いだろうけど・・・・・・でもだからといって『ああ、あんなことするつもりはなかったんだけど、あの時はハイになってたから』なんて言って回れないわ。実は、彼女のあたしに対する発言のことで、後で何度か彼女と話し合ったんだけど、あの娘のほうはいつも『あの時はあたし本当にぶっ飛んでたのよ。本気で言ったんじゃないわ。わかるでしょ』って感じで。でたらめもいいとこよ。それをいつも言い訳にしてたら、どんなひどい振る舞いだって正当化されちゃうじゃない」

■あなたに対するああいう発言がなければ、すべてが崩壊し始めた時に彼女のそばい行ってあげたと思いますか?
「ええ(と悲しげに微笑む)。あたしってすごく母性が強いし、それに本当に世話好きなのよ。あたしもヤク中の恋人と付き合った経験があるの。だから彼女にそばに飛んでいったと思う。でもそしたら多分、彼女の人生にうんざりするほど関わっちゃって、仲裁しようとしたでしょうね。でも結局それってやっちゃいけないのよ。やっぱり自分で切り抜けなきゃ。」

■彼女にとってこれから状況がどう動いていくか、推測してもらえますか?
「見当もつかないわ。彼女ノカルマがどんなものか、あたしにはわからないもの。彼女の未来もあたしにはわからないわ。前にも言ったことがあるけど、コートニーは本当に才能があると思うけど、何かしっかりしがみついていられるものを見つけなきゃだめよ、そして幸せを見つけなきゃ。でなきゃ、彼女がこの先どうなるかあたしにはわからないわ。これはどんな人にも当てはまることよ」

■もっと新しい、今まさに成功途上にある女性アーティストたちのほうが好みですか?例えばエラスティカなんかは、けんか腰と思えるくらいポジティブですが。
「ええ、ああいうアティテュードは好きよ。アラニス・モリセットも同じだわ。『人生なんてうまらない。どうでもいいじゃないか』っていうんじゃないのよね。運命論は去り、懐疑的思考も去っていった。今はもっと希望に満ちているわ。強さや勇気がテーマなのよ。けんか腰で反抗的でありながら、同時に強くポジティブでもあるのは可能なことだと思う」

■音楽に対して純粋な情熱を抱いていますか?
「(ぎょっとして怒り出すマドンナ)もちろんよ!!

どうしてわかるんですか?
「とにかくそうだからよ。アドレナリンが駆け巡った時みたいな、ドラッグみたいなものよ。曲を作ってて、それがいい曲になるとわかった時なんて、顔が紅潮してきて、血液が血管の中を流れるのがわかるんだから。生きてるって実感して、神経の先が全部立ってるのがわかるの。とにかく何かピンとくるのよ・・・・・・。他のアーティストの音楽、魂をさらけ出してるアーティストの音楽を聴いたときも、同じような気分になって、もう本当に感動してしまうの。人が途方もなく音楽が好きなのも、そのせいだと思うわ。みんな言うよに音楽って人間の中にある獣のような野蛮さを確かに和らげてくれるのよ。説明のつかない原始的な形で人の心を動かすのよ。文学よりも何よりも大きくね」

『エビータ』のサントラ盤のレコーディングのため、2ヶ月間英国に滞在したが、マドンナは大いに楽しみ、友人を作り、リラックスすることができた。そんな中で、彼女が楽しめなかったことの一つが『トップ・オブ・ザ・ボックス』に出演して、「You’ll See」を披露したことだという・・・
「そもそもあたしって、テレビに出るのがそれほど好きじゃないから・・・・・・『はい次!』って感じで扱われて、売春婦か何かみたいでしょ・・・・・・。でもロンドンは最高だったわ。だけど、今はあたしもロンドンが好きだけど、やっぱりあそこは訪れた人を抱き締めてくれるような街じゃないわね。手に負えないって相手って感じ」

アメリカ人はイギリス人より清教徒的だと発言したことがありますが、あれはどういう意味だったんですか?
「あたしそんなこと言った?アメリカ人はヨーロッパ人より清教徒的だって言ったと思うんだけど。必ずしもイギリス人ってわけじゃなくてね。でも、イギリス人は、アメリカ人とはまた全然違った抑圧を抱えていると思う。とても礼儀正しく親切だけど、その一方ですごく暗い一面も持っている。実際彼らってすごく異様で、すごく歪んでてそして・・・・」彼女は急に話を中断し、そしていたずらっぽくニヤニヤ笑って言う。「あたし、そういうのって結構好きなのよね」

英国の政治家のことを言ってるんでしょう?
「いいえ、いろんな人のことを言ってるの」

英国王室はいささか物笑いの種になってしまっていると思いますか?
「判断を下せるほどあたしはあの人たちのことを知らないから、ダイアナ妃のことをちらりと考えたり、チャールズ皇太子のことをちらりと考えたり、何て憂鬱な生活を送ってるんだろうって考えたりはするけどもね。あの人たちには、国民の期待に十分応えることは絶対にできないわ。それに・・・・」両手を広げ、不思議そうな表情をするマドンナ。「実際のところ、あの人たちって何をしているの?あたしは下層中流階級の出で、勤労倫理っていうものを持っているの。だから、ただ座っているだけで何もせず、いつもチャリティ・イベントばかり行っている人がいるだなんて、考えただけで耐えられなくなるのよ。あまりにも退屈そうなんですもの」

アメリカでは、エンターテイメント界のスターが王族みたいなものでしょう。米国女王に立候補なさいませんか?
マドンナは片方の眉を上げる。「冗談でしょ?あたしが米国女王なんかになれるわけないわ。あまりにも多くの人を怒らせてきたもの。あたしのそばにはいつもアメリカの女王たちがいるけど(“QUEEN”はオカマの俗称でもある)、それ以外はね・・・・・」

あなたのシングルは、英国がブラーとオアシスのチャート戦争に夢中になっている最中にリリースされましたが、この騒ぎのことは知ってました?
「いいえ、ブラーについてあたしが知っているのは、彼らが存在するということだけよ。オアシスのCDも聴いたけど、あたしにはピンとこなかったわ。英国では誰もが彼らに夢中なのは知ってるわよ。でも、例えば、アメリカじゃ誰もがマライア・キャリーを聴いているけど、やっぱりあたしにはおもしろくない。それと同じよ。」

アールズ・コートのオアシスのギグを観に行くことになっているじゃないですか?
「招待はされたけど、『単に彼らが大物だというけで、行くつもりはないわ。彼らの音楽が気に入らなきゃね』って言ってやったの。そしたらCDをくれたんで聴いてみたんだけど、興味がわかなかったわけ」

彼らのロックっぽさのせいで、気がそれたんでしょうか?
「ええ、あたしってとにかくそういうのに馴染めないのよ。そもそも男性アーティストに共感を抱くことからして苦手なのに・・・・ブルースとかR&Bとか、そういう類じゃない限りはね。あたしにはロックって、いかにもマッチョ的なアティテュードを笠に着た、一つの生き方のスタンスのように思えるの。とにかくあたしにはピンとこない。オアシスを聴いても、いったい連中が何を歌っているのかさっぱりわからないし、どうでもいいって思っちゃうのよ」

ギャラガー兄弟の一人、ノエルが、あなたに会うのを楽しみにしていて、あなたが子供を産む手助けができたらこれほどうれしいことはない、と発言をしていましたが、、、
思わず、跳び上がるマドンナ。「本当?・・・・・」

冗談で言ってただけで、無礼をはたらいていたわけではないんです。
「いえいえ、そうじゃなくて」と、明らかに大喜びの様子で彼女は微笑む。「何て優しいんでしょう。あの子たちってどんなルックスなの?あたし、まったく知らないのよ。アルバム・カバーには後頭部が写っているだけだし。キュートなの?」

キュート?そうですね。実際そう思うかもしれませんよ。ちょっとイタリア系っぽい顔してますし。
「イタリア系?まあ素敵」彼女は残念そうにため息をつく。ミラノのダウンタウンにいるギャラガー兄弟を想像するにはいささか努力を要する、ということには気付かずに。「さっきあたし、随分ひどいことを言っちゃったわね。このインタビューを読んで、彼らが侮辱されたと感じなければいいんだけど。でもどうしようもないのよ。とにかくあたしはロック・ミュージックに興味が持てないの。ビートルズにさえ興味を示さなかったのよ、想像できる?」と彼女はわたしの方を向いて、お転婆娘のようににやりと笑う。「こんなこと言うと罰当たりかしら?」

『セックス』と『エロティカ』の頃は、論争は彼女と世間の断続的な恋愛関係を崩壊に導いた張本人、と名づけられてもおかしくなかった。しかしマドンナは、マスコミ操作の第一人者としての評判にうんざりした様子である・・・・
「連中はあたしの人生のありとあらゆる局面を一つ残らず取り上げて、『ああ、彼女はわざとああやったんだよ、あれは彼女のでっち上げさ、あれも彼女が巧みに操作したんだ・・・・・』って言うのよ。ほんとうんざりしちゃう。これも、あたしがこの地球上で自分の望み通りのことをやって楽しんでるという事実に対して、人々が不安を感じないようにするための、マスコミ連中の一つの手でしかないのよ」

あなたの残した遺産のネガティブな側面として考えられるのが、あなたが多くの心得違いをしたマドンナ志願者たちを“鼓舞”し、下着を見せびらかしさえすればいいのだと信じてポップス界に入り込むのを“奨励”してしまった、ということです。彼女たちへの責任を認めますか?
「ノー」と強い調子でマドンナは答える。「その娘たちは、すべきでない思い込みをしたのよ。あたしはただ下着姿で飛び跳ねていただけで、だっから成功したんだって。確かにヌード写真を撮ったりいろいろやったお陰で、この世界の扉を開けることはできたわよ。でもそれだけじゃ、部屋の中にとどまることはできなかった。あたしくらい長く続くためには、もっとそれ以上のものが自分に追い風になるように持っていかなきゃダメなの」

あなたの自己顕示癖、パフォーマンスへの愛情が、あなたの不利になるように使われ、汚らわしい恥ずべきものに変えられてしまった、と感じますか?
「ええ。連中は、あたしから力を奪うためにそういうことをするのよ。自己顕示欲の強くないパフォーマーなんて、この世に存在しないわ。自己顕示欲の強くない人間がこの業界にいても意味ないのよ。ところで、自己顕示欲が強くてしかもすごくシャイだってこともあり得るのよ」

■シャイなんですか?
「ものすごくシャイなことも・・・・・あるわ」

でも同時に、ちょっぴりトラブルメイカーでもあるんじゃないですか?
狂ったようにニヤニヤ笑うマドンナ「もちろんそうよ。本当に嫌な女なの!・・・・・。でもかわいらしい、少女のような一面もあるのよ。だけどそのことは誰も知らないわ。わかるわけがないわよ。あたしのことを良く知らない限り、誰にもわからないんだから」

■あなたはエルヴィス・プレスリーの大ファンですが、彼が生きていたら、あなたのことを気に入ったと思いますか?
「もちろんよ。そう思わない?」

思いません。逆にあなたのことを認めなかったんじゃないかしら
「何ですって?どうしてエルヴィスがあたしのことを認めないのよ?」

あの『セックス』本、あの股をなでる振りつけ、ああいったものすべてが・・・・・。
「じゃあ、彼のキャリアはどうなのよ?テレビは20年間も彼の腰から下を映さなかったのよ!」

でもそれは見せかけで、実際の彼は非常に保守的な性差別者のおうに思えました。しかも偽善者だった。ビートルズに愛想よくしながら、FBIには“連中はマリワナを吸う不良で逮捕されるべきだ”と報告しています。
「ハハハッ!・・・・・。そして彼の方は麻薬中毒だったって言うんでしょ!」

その通り。しかも彼はプリシラに、自分への敬意を強要して随分辛い思いをさせました。
夢を見ているような表情でため息をつくマドンナ。「それはまあ、彼はとんでもない性差別主義者のブタでひどい夫だったかもしれないし、多分ひどい父親でもあったかもしれないけど・・・・・。だけど彼は素晴らしい声も持ち主だったし、信じられないくらいセクシーだったわ。そういう観点から彼を評価することはできるわよ。あたしのことも好いてくれなかったかもしれないけど、でも誰に断言できる?もしも死んでなかったら、劇的な体験をして改心して、すごく気高くて寛容で心が広い人になって、あたしが守ろうとして闘っているものすべてを受け入れてくれたかもしれないし・・・・」突然話をやめ、ゲラゲラ笑い出すマドンナ。「そんなわけないわね!・・・・・でもまぁ、人間、夢くらい見てもいいでしょ」

男たちは・・・・・。
「卑劣だと思うかって訊きたいんでしょ?イエス!」といってまたひとしきりヒステリカルに笑うマドンナ。そしてようやく気持ちを落ち着ける。「続けて!」

男たちは、一般に、あなたを認めていないと思いますか?あなたは女性嫌悪症の男たちのターゲットなのでしょうか?
「もちろんよ・・・・・。パワフルな女性はどんな社会でも脅威的存在だわ。だからあたしもそういうターゲットになるのよ。他の女性たちでさえあたしに脅威を感じてるもの。嫌になるけど、同時に気持ちを奮い立たせてもくれるわ。そういうものをすべて破壊してしまいたい、終わらせたいと思わせてくれるから」

目の前の男が女嫌いかどうかは直感でわかるんですか?
「そのとおりよ」

オーラが漂ってるんですか?
「ええ。あの人たちって大きな黒い雲を背負ってるから。でももちろん、話をしてみなきゃ確かなことは言えないけど」。彼女は急に話を中断し、そしてちゃめっけたっぷりに言う。「どんな時も会話をするということはいいことだわ・・・・・。でも女嫌いって必ずわかるわよ。特に、仕事にそれが表れている場合はね。アーティストなら彼の作品に、政治家なら彼の発言に、といった感じで」

男を嫌っている女を指す同様な単語が英語にないというのは、暗示的なことだと思いますか?
「ものすごく暗示的だし、これから先も絶対にそんな言葉はできないわよ。だってあたしたち父権社会に住んでるんですもの。男は女を嫌ってもいいけど、女は男を嫌っちゃいけないのよ」

女嫌いというのは、男がなり得る最悪の形だと思いますか?過去にも多くの才能ある、興味深い男たちが女嫌いでしたよね。エルヴィス、ケネディ大統領、ヘミングウェイ、マーヴィン・ゲイ・・・・・。
「ピカソもよ」と思いに耽った様子でマドンナは付け足す。

■その通りです。ではこの特性を、男の評価基準の一つとして考えるべきでしょうか?
しばらく思案するマドンナ。「ええ・・・・・ある意味ではね。強い女に対して心地悪さを感じるような男は、自分の中にある女性的な本能に対しても心地悪さを感じるものだからよ。とにかく不快だ、以上!って。自分と少しでも違うものすべてに脅威を感じるのね・・・・・だからこれはどんな男についても評価の基準になるわ」

■あなたは法王以上にカトリックの教養の普及に貢献したという意見には賛成ですか?
しかめ面をするマドンナ。「確かに随分注目を集めさせはしたけど、あたし自身はそれでポピュラーになることはなかったわよ。それどころか大勢の人を怒らせたわ。でももしかしたら、あたしのせいで無意識の内にカトリックに興味を抱いた人も何人かいるかもしれないわね・・・・・」

■わたしはあなたのお陰で、自分が落ちこぼれカトリック教徒ならいいのに、と思いましたよ。
「あーら、それはありがと」と、彼女は皮肉っぽく気取って言う。「お世辞が上手ね!・・・・・。カトリックの教養はあなたをめちゃくちゃにもできるけど、ためになるものでもあるのよ。たとえばカトリックはあたしの中での愛に、形を与えてくれた。その点に関しては、カトリックが完全にあたしを形作ってくれたの。カトリック教徒じゃなきゃ、あたしはまったく違った人間になってたわ」「とてもドラマティックな宗教なのよ。まるでオペラみたいに。そうでしょ?すごくものものしい行列だの儀式だの祭儀だの懲罰だのがあって、音楽も素晴らしいし、美しいステンド・グラスの窓があって、罪を犯したときは幕で覆われた暗いブースに入ってひざまずき、自分の犯した悪事をすべて司教に打ち明けてって、とにかく何もかもすごく・・・・・倒錯してるの!」

■あなたの神はビリー・グラハム(米国の著名伝道者)が一緒にゴルフを楽しむ神と同じではない、と考えても差し支えないですか?
「あたしは、どの人の神も同じだと思うの。歴史の始まりには全部一つの宗教だったのに、人間のほうが恐れをなしてエリート主義になっちゃって、『これがわたしの神だ、これがわたしの宗教だ』って言わなきゃならなくなったのよ・・・・・。でもあたしと神との関係は、彼はいと高きところにいてあたしたちはずっと下のほうにいる、っているものではないの。あたしはそういうのは信じていない。神はあたしたちすべての人間の中にいて、あたしたちはみんな神や女神になることができる、と信じてるの。これがあたし流のカトリック的神秘主義よ。そこに仏教をちょこっと加えれば、あたしの宗教のできあがり」

■神を信じているのなら、悪魔も信じているはずですよね。
「悪魔を信じているっているというのとは違うわ。あたしは悪を信じていて、悪魔を悪を象徴するものなの」

■あなたの作品には宗教上の象徴がちりばめられていますが、悪魔は登場しませんね。どうしてですか?悪はセクシーじゃないですか?
仰天するマドンナ。「あたしは悪がセクシーだなんて思わないわよ!残酷になったり卑劣になったり他人を傷つけたりすることがセクシーだなんて思わない!・・・・・。でも」と彼女はニヤリと笑う。「とびきりのバッド・ボーイズには何度か夢中になったことがあるけど!」

■あなたのようなポップ・ガールには、悪魔というのはロックンロール的過ぎるのでしょうか?
「どういう意味かしら?」

■悪魔というのはロックンロール神話の一つじゃないですか?バンドが岐路で悪魔に出会い、魂を売り渡し、そしてレッド・ツェッペリンになると。
納得できないという表情でマドンナは冷たく笑う。「もちろんあたしはそんなふうに考えたこともないわよ・・・・・。実際、ロックンロールが悪魔の音楽だなんて言ったら、ロックンロールに実際にはないすごい深みと意味を与えちゃうじゃない。だからここでは調子に乗り過ぎないようにしましょうよ」「あたしにも悪魔的な側面はあるのよ」と彼女は付け加える。「でもあたしは、何か憧れを抱けるものを人々に与えるほうがいいと思ってるの・・・・・。ただし」と言って彼女はせせら笑う。「“悪魔的な側面は『セックス』本と『エロティカ』で存分に見せてくれたじゃないか”って言う人も、中にはいるでしょうけど」

■『セックス』そして『エロティカ』のリリースを、マドンナの誹謗者たちは“あの恥知らずな女が報いを受けた愉快な瞬間”として捉えている。
「誰もがみな『セックス』を買いに行って、それこそ2秒で売り切れたわ。そしたらみんな一斉にあたしのことをこき下ろし始めたのよ。あたしに言わせれば、この出来事は私たちが住んでいる世界の偽善をはっきりと表している。みんなセックスにすごく興味があるのにそれを認めようとしないという事実をね」と、口を尖らせすねた振りをして彼女は言う。「『セックス』であたしは言いたいことを全部言ったし、みんなもあたしが言いたいことを全部言ってたってことがわかっているのよ。だからこそみんな、こんなあたしにムカつくわけ」

■みんなというわけではないでしょう。特にあのSMエッセイがすごくおもしろいと思った人は、大勢いますよ。
「本当?」と彼女はもの憂げに言う。「でもそうなのよね」と彼女は続ける。「そこなのよ問題は。笑えてくるもののはずなのよ。あそこはユーモアを交えて読むべきページだってすごく思うし、『セックス』であたしがやろうとしたのはまさにそれなの。でも誰もそのへんの微妙なところがわからなかった。誰もあの本のユーモアがわからなかったわ。あのSMエッセイだって、笑えるものとして書いたのよ。途方もなくホットで刺激的でエロティックなポルノ作品にするつもりなんて、まったくなかったんだから。実際あれば、人々が他人や自分のセクシュアリに対して持っている偏見をからかったものなのよ」

■あなたはずっと男が抱く願望に迎合していると非難されてきましたが、ローリング・ストーン誌の対談であなたはキャリー・フィッシャー(『スター・ウォーズ』のレーア姫役で有名な女優兼作家)に、自分はフェラチオが大嫌いで絶対にやらない、と言ってましたよね。そんなあなたが、男たちの願望の世界で1分と持つでしょうか?
マドンナは笑う。「ああ、あれは嘘よ!・・・・・。もちろんあたしだってフェラチオくらいするわ。あれはジョーク!あの時あたしたち、生意気女を気取って話してたの」

■活字の上では真実味がありましたけど。
「何だって活字になると本当っぽく見えるわよ。ナショナル・エンクワイアラーやニュース・オブ・ザ・ワールド(共にタブロイド紙)の記事だって、活字になると本当っぽく見えるじゃない」

■あなたは男性の願望に迎合しているのですか?
彼女はため息をつく。「そうかもしれない。でも誰が気にするって言うの?もちろん自分自身の願望に迎合してはいるわよ。あたしはいつも、自分の願望にひねりを加えて人前に出しているの。インタビューの最初にあたしの曲のことで話したようにね。必ず言外の意味が含まれているのよ。それに、『セックス』本の中の二人の男がイキそうにななってる写真を見て、大勢の男が怒り狂ったはずよ。多分、あたしのことを実際にどう評価したらいいのかよくわからないっていう男性が、世の中にはたくさんいるんじゃないかしら」

■『セックス』の中で唯一本当に動揺を覚えさせるのが、ジムで撮られた“レイプ願望”写真です。あれは非常に慎重に扱わなければならないテーマであることは、意識していましたか?それともあれも単なる写真の一枚に過ぎなかったのでしょうか?
いぶかるようにわたしを見るマドンナ。「二人の男子生徒があたしに襲いかかってて、あたしがカトリック系女子校の制服を着ている、あの写真のこと?・・・・・あれは単に、抑圧されたいっていうあたしの願望の一つでしかないわ。あたしはレイプされたことがあるけど、その経験を表現しようなんて絶対に思わない。でも、二人の男だとか男の一群だとかに抑圧されたい、っていう願望を抱いている女性が大勢いるのはわかってるわ」

■いずれにせよ“レイプ願望”という言葉自体が撞着語法ですよね。レイプというのは、相手の意に反して、力ずくで奪うという意味ですから。
「その通り。あたしの写真の中では、まったくの合意の上での行為なのは一目瞭然だわ。誰だってああいうことがやりたいのよ。写真の中のあたしは笑みを浮かべてるでしょ。楽しんでるからよ。だから、女性のほうがやりたがっている場合は“レイプ”願望を抱くということにはならないかもね。とにかくこれも、本当は興味があるくせに興味のない振りをするっていうケースの一つでしかないのよ」

■あなたがレイプされたことがあるとは知りませんでした。
「人に話したのはあなたが初めてだからよ」

■それってデート・レイプ、つまり知ってる男にやられたんですか?
「いいえ・・・・・まったくの赤の他人」

■その後誰かに相談に乗ってもらったりはしたんですか?
「いいえ、あの頃のあたしはすごく若くて、知り合いがいなかったから。ニューヨークに越してきたばかりでそして・・・・・。すごく勉強になる体験だったわ」顔を歪め黙り込むマドンナ。

■この話はあまりしたくない?
「もしこれが・・・・・」彼女は話を中断し、注意深く言葉を選ぶ。「あたしは『みんな聞いて!あたしはこんなひどい目に遭ったのよ!』っていう、オプラ・ウィンフリー(米国の御涙頂戴系トーク番組の司会者)とかシンニード・オコナーの世界にはまりたくなかったの。あの体験を問題化したくなかったのよ。“身の毛もよだつほど恐ろしいこと”と大勢の人が思うような恐ろしい経験をしたとは思ってるわ。でもだからといって、かわいそうだとか思われたくないのよ。あたしは思っていないから」「もう随分前のことだから、年月と共に“しかたなかったんだ”って受け入れられるようになったわ。ある意味で、すごく目を開かせてくれた経験だった。ニューヨークに出てきてまだ1年しか経ってなかったし、あたしもすごく若くて、人のことを簡単に信じちゃってたの。アメリカの中西部から出てきて、周りの人はみんなあたしの友達って感じでニューヨークを歩き回ってたわ。だから、もっと土地鑑が鋭くなってもっと抜け目がなくなったっていう意味で、あの体験はあたしをすっかり変えてしまったの。ことわざにもあるじゃない。お前を殺してしまわないものはすべて、お前を強くしてくれる、って。事件の後はすごく動揺したけど、デトロイトには帰れないことはわかってた。家に帰るなんてとんでもなかったわ」

■そんな辛い経験をアートで表現するなんてことが、どうしてできたんですか?思い出したくないことも思い出さなきゃならなかったでしょうに。
「そんなことないわ。“レイプ”されてるんじゃないもの。さっきも言ったように、あれはあたしが望んだことなのよ。あたいは男たらしだか処女だか何だかを演じてて、彼らはバッド・ボーイズなわけ。彼らはあたしのことを奪うけど、それはあたしがそうする機会を与えたからに外ならないのよ」マドンナは、わたしがちゃんと理解しているかを確かめるようにわたしをじっと睨み、そしてこの話題を終えようとする。「あたしがあの時体験したことで重要なのは・・・・・。あの時は確かに打ちのめされたけど、あの経験で自分がずっと強い人間になったってことがわかるのよ。あの経験はあたしに生き残る事を強いた。それだけのことよ」

■マドンナがあまりにも人間性を奪われてしまった存在であるがために、彼女ならこういう経験さえ新聞ネタとして提供しかねない、と憶測する者も中にはいるかもしれない。でも彼女は気にしちゃいない。そういう憶測には十分過ぎるほど慣れているからだ。
「あたしのやることは全部パブリシティ目当ての行為だと思ってる人もいるわ」と、うんざりした表情で彼女は指摘する。「トイレに行くのもパブリシティ目当てだと思ってんのよ」

■有名人を“イコン”に変えるには何でしょうか?
彼女は一瞬考える。「人々がより非現実的な形でこちらとアイデンティファイし始めた時に、イコンに変わるのよ。その途端に、自分はあらゆる人の夢を成就する者になるの。人間性を奪われたその人物に、人々は取り憑かれていくのよ。人間らしい特徴を見せたら最後、台座から引きずり降ろされちゃうわ。そしてその時バッシングが始まるのよ。野心満々の怪物、売女、無能な女ってことで簡単に片付けられてしまうの」

■歴史があなたの無実の罪をすべて晴らしてくれるのでしょうか?
MOR界のメドゥーサは微笑み、両手をしっかり組んで言う。「ええ、まるでメロドラマみたいにね」「そう、あたしが死んだら・・・・・。死ねばもはや恐れるものはない!じゃないけど、あたしにとって励みになるのは、歴史が始まって以来ずっと、偉大な芸術家はみな必ず死ぬまで完全に誤解され、十分な評価を受けることが決してなかったということ。連中はヴァン・ゴッホを理解せず、イエス・キリストを十字架にかけたのよ・・・・」。そう言って彼女はクスクス笑い出す。「だからそう、あたしにはそれが慰めなの」


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