■今回のアルバムは“わたしは何のためらいもなく/名声と交換に愛を手に入れた”という言葉で始まりますが、あなたは名声とその代償という問題に対して非常にアンビヴァレントな感情を抱いているようですね。大きな代償を支払うような価値があったのか、確信がもてないでいるというか。
「アンビヴァレントというのは当たっているわ。別にこの場で『ああ、有名人になったのことはわたしの人生で最悪の出来事だわ』なんて嘆くつもりはないけど、その一方でとてつもない十字架を背負い、大変な苦難に耐えなきゃならないことも事実だから。でもわたしは自分の人生を何とも交換するつもりもないわ。だって、これまで本当に恵まれてきたし、本当にいろんな特権を手に入れてきたから・・・。名声ってね、苦痛とエクスタシーの両方なのよ。いろんな人と出会って、他の誰も経験できないようなことが経験できるけど、その一方で匿名性を失ってしまうの。名声が自分の人生で占める位置についてははっきりと認識してるし、もちろん音楽のキャリアを始めた時点で、名声が何に取って代わったかもちゃんと理解してるわ。ただ、この問題の全体像が、今ほどよく把握できたことはこれまでなかったのは確かね。今のわたしにはわかるのよ・・・。そしてこれは何年も前からわかり始めていたことなの。つまりこの称賛も、世界中で人気があり愛されているんだという陶然とした気分も、真に愛されることの代用品にはなり得ないんだ、ってこと。でも、どれかを選べと言われたら、名声ほど最適な代用品はまず存在しないでしょうけどね。だから、結局のところ、わたしはそうやって得た名声を踏みつけて、『こんなのくだらないわ』というつもりはないのよ」

■ところでダイアナ妃が亡くなった直後、マスコミの度を超した取材合戦もなくなるだろうという空気がしばらくありましたよね。あなたもこれで変わるだろうと思いました?
「ええ、で、実際に変わったかと思うかと訊かれたら、答えはノーよ。全く変わっていないわ」

■『エビータ』が終わって間もなく起きた悲劇でしたから、相当な運命の皮肉を感じられたのではないですか?偶像的存在の女性が,自分の属する上流階級からは声高に不信を抱かれていたにもかかわらず、庶民からはとてつもなく・・・・。
「・・・支持されていた!信奉されていたと言ってもいいわ!そう、確かに面白い相似点がたくさんあるわね。一方ではダイアナ妃に批判的な連中というのが大勢いて、彼女の行動に激怒し彼女を絶えずいじめているように見えたものよ。でも、彼女が死んだ時、彼女が本当はどれほど人々に愛されていたかがわかって、みんな仰天したでしょう?あの出来事は、意地悪は優しい行為よりもずっと目立つんだということを証明してくれたわ。わたしの言ってる事わかる?だって彼女を愛し支持してた人たちが、彼女の死後あんなにたくさん現れたじゃない。つまり、彼女が生きていた時は、批判的な人たちの怒号が大きかったということだけなのよ。だから新聞や何かを読むと、そういう負の声ばかり目立ってたというわけ。」

■なるほど。では同じく1曲目の“ドラウンド・ワールド”で、あなたは“愛人もたくさんいたけど/みんな、わたしのスポットライトのおこぼれにあずかりたかっただけ”と歌ってます。それに気付いたときは気が滅入りましたか?でも、そもそも男たちの側に、それ以外の選択の余地などあったんでしょうか?
「まあ、それだけのために彼らがわたしに惹かれたとは言わないけど、でもそれが重要な位置を占めていたということはわかるの。権力は偉大な性欲促進剤、そして名声も偉大な性欲促進剤なのよ。」

■では、彼らに失望を感じてます?
「いいえ、まったく感じてないわ」

■かつては、“拒絶は偉大な性欲促進剤だ”ともおっしゃってましたが。
「そう、それもよ!アハハッ!」

■いろんな促進剤が必要なんですね?(笑)
「誰でもそうなんじゃない。わたしはみんなの代弁をしてるだけよ。だって拒絶にしたって・・・誰でも、手に入らないものが欲しくなるものでしょう?ほんのつかの間の陶酔を感じるためにね・・・みんなその時はそれしか頭にないのよ。そして朝目が覚めると正気を取り戻し、そしてそれぞれの日常へと移って行くの」

■結局、その・・・・“伴侶”を捜し当てることができなかったという後悔の念は、絶えずつきまというものとしてありますか?
「確かに、これまではそうだったわ。わたしの職業やわたしが送っているような生活、それにわたしが有名人だということなんかを考えると、他人が魅力を感じるようなライフスタイルだとはあまり思えないもの。何しろ奇妙な立場に置かれてしまうでしょ?もちろん周囲の注意を引くことに興味のある連中や、すごく表面的な連中は別よ。でも、わたしっていろんなお荷物を抱えてるから、よほど強靭で勇敢な人でないとこんなわたしと恋愛なんてできないのよ。“この人とならやっていけるかも”なんて思いがよぎることもあるにはあるけど・・・『もうなるようになれだわ』と思う瞬間がね」

■“ナッシング・リアリー・マターズ”はルルドのことを歌ってると思うのですが、あの曲であなたは“こんな無償の愛を感じたのは人生でこれが初めてだ”と言いたかったのですか?
「そうよ、まったくの無条件なの。彼女はわたしが有名人だってことを知らないから。全く何も知らないのよ。それにこういう絶対的な無条件の愛情というのをわたしはずっと知らなかった・・・母親なしに育ったからよ。そりゃ父親はいたけど、母親から受ける愛って全然違うものだと思うのよ。だから娘の誕生はわたしにとてつもないインパクトを与えたの。子供を持つ人は誰でもそう感じるでしょうけどね。でも子供を持ったら、自分の中から抜け出さなきゃダメね。じくじくと自分を哀れんだり犠牲者のように感じたり、そんなことは一切してられなくなるもの。人生を、それまでとはまったく違う視野に立って見るようになるのよ」

■ルルドの成長振りはいかがですか?
「あの娘、何にでもキスしちゃうの(笑)!犬にもキスするし、公園で知らない人にもキスしちゃうのよ。『ドッグ』って言葉はよく言ってるわ。あと『ノー』もね。ノーって言うのがすごくうまいの」

■ルルド(※聖ベルナデットの奇跡で知られるフランス西南部のカトリック巡礼地)という名前はやはり、ある種の癒しの力を持つ存在になって欲しいという願いを込めて、名づけられたんですか?
「その通りよ。わたしの人生を癒す力になって欲しかったの。ルルドというのはわたしの母にもゆかりのある町で、いつもそこから聖水を送ってもらってたわ。母はずっと訪ねたがっていたけど、結局実現できなかったの」

■ところで精神分析をやったことはありますか?
「ええ」

■それは今でも?
「ええ」

■以前より多少は役に立つようにはなりましたか?
「行ったり来たりだわね。新たな発見なんてもう何もないんじゃないか、って思う時もあるし。あるいはいつも代わり映えのしない領域を踏み戻っているだけなんじゃないかって、うんざりしてしまったりとかね。でも、そんな時、何かの拍子でパッとひらめきが訪れて、自己啓示を受けるの。だっていつも通ってるわけじゃないのよ。ただ必要だと感じた時に行くだけ」

■とてつもなく高くつくんじゃないですか?
「この街ではね。弁護士も精神科医も・・・。わたし職業を間違えちゃったかもね」

■子供の頃の一番最初の思い出というと、どんなものを思い出しますか?
「・・・・・・・・・(いつ果てるともない長い沈黙、だが実際には29秒)。子供の頃の思い出は山ほどあるけど、どれが一番最初かはよくわからない・・・・ベッドで両親の間にはさまって眠っちゃったことか・・・・・・それとも父がフェンスのペンキ塗りをしていた時、ペンキ缶に足を突っ込んじゃったことか・・・・あるいはライターの火の中に指を突っ込んで、父が言ったとおり本当に熱いものなのかどうか確かめてみたことかしら」

■もしかしてそれ以来、あなたはずっとそうやって、物事がどうなってるか確かめたくて炎の中に手を突っ込み続けてきたのではないでしょうか?
「(妙に悲しげな表情で)そうね・・・・・。そのことは本当に鮮明に覚えているのよ。いつも父に言われ続けたのを覚えているのよ。『いいかい、これは本当に熱いんだよ。ものすごく赤いだろう?だから指を突っ込んじゃだめだぞ。』ってね。わたしは思ったわ・・・『でも指を突っ込まないでどうして本当に熱いかどうかわかるの?』って。それで指を突っ込んだんだけど、当然ながら一切同情されなかったわ。当時から何も変わってないってことね、アハハッ!」

■あなたに関する記事の中で、これまで最も傷ついたものというとどれですか?
「あら、どうしよう?わたしが知らないものもきっとたくさんあるはずだし・・・・・・(長い沈黙の後、両腕をきまり悪そうにひざの間ではさみながら)最悪だったのは、“注目を集めるために赤ん坊を産むんだ”って非難されたことかしら。あれは本当に途方も無い言いがかりだったわ。でも、そういうことは、頭の中から徐々に消去していくことにしてるの」

■こういう憶測も流れましたよね、“カルロス・レオンはいわゆる精液ドナーとして選ばれただけだ”と。
「恋人としてというよりは、っていうんでしょ?でもそれって多分、わたしより彼のほうが傷ついたんじゃないかしら。みんなわたしのことになると、愛や感情があってのことかもしれない、という可能性を無視して、あたかもすべてが計画され操作され計算されているかのように見せようと躍起になるのよね。多くの人間がわたしのことをそういうふうに考えているみたい。だけど、恋に落ちるとか赤ん坊を産むとか、そういうのって誰もが共感できる人間の基本的本能に含まれているとわたしは思ってるんだけど、一部の連中はわたしにそういう本能を持たせるのさえ我慢ならなかったというわけ。でも別に構わないわ。だってわたしには素晴らしいベビーがいて、連中にはいないんですもの」

■赤ん坊に近づかないように、カルロスに金を渡してお払い箱にした、という噂も事実無根だと?
「当たり前よ。実際彼は今ルルドと一緒にいるもの。まさに“パパのかわいい娘”って感じでもうメロメロよ」

ところで、昔のアルバム・ジャケットを見て恥ずかしくなる事ってあります?
「アルバム・カヴァーはわたしの人生縮図みたいなものだから、でも確かに、昔の自分の写真を見ていると『どうして誰もわたしを逮捕してくれなかったのかしら。どうしてわたしがこんな髪型をするのを止めてくれなったのかしら』って思うことはあるわ(笑)」

過去、最も悲惨な勘違いファッションというと、どの時期だと思います?
「すべてひどいものよ。どれも素晴らしいけど悲惨でもあるってこと。最近は誰もが80年代をこき下ろしてるけど、わたしは80年代はとても素晴らしい時代だと思ってたし、これにはボーイ・ジョージもきっと賛成するはずよ」

うぬぼれや気取りをモロに見せていたという意味で、非常にもったいぶらない時代でしたよね。
「(笑い転げる)ほんとそうよね!でもじゃあ今はどう?何も変わっちゃいないじゃない。今はみんな70年代に夢中・・・。音楽であれ、映画であれファッションであれ、みんな再び70年代を取り上げてるでしょ。でも80年代がもっと遠い過去の話になれば、わたしたちきっと同じことするわよ。80年代を祝い、分析し、そして恐らく高く評価するはずだわ」

1979年当時、あなたはニューヨークのブレックファースト・クラブでドラムを叩いてましたね。スタジオ54にもよく通っていたんですか?
「うわあ、それってもう大昔の話だけど、でも最高にクールな時代で、最高にクールなクラブだったわ。あそこのお客はみんな・・・わたしが通いだしたのはもう閉鎖間際の頃だったから、アンディ・ウォーホルとかスターリング・セイント・ジャック(※ニューヨーク・クラブ・シーンの伝説の顔)とかライザ・ミネリには会えずじまいだったの。あの頃はもう、ダンステリアとかマッド・クラブが代わって台頭しはじめてたんじゃないかしら」

ダンスフロアは魔法のような場所だという意識が、あなたの音楽を聴いてると凄く伝わってくるんですが。
「確かにダンスフロアは魔法のような場所だった。もともとダンサー志望だったってことがすごく関係してるんだと思うわ。踊るたびに自由を感じるの。自分の体を支配し、思い切り羽目を外し、音楽を通して自分を表現してるんだっていう感覚。これってたまらないわよ。だからいつもわたしは、ダンスフロアは魔法のような場所だと思ってきたの・・・たとえエクスタシーを決めていなくてもね」

でもみんなはエクスタシーをやりながら『レイ・オブ・ライト』を聴くんでしょうね
「でもエクスタシーなんてもう、“太古の昔”から出回ってるじゃない?わたしがクラブ通いしてる頃からあったわよ。今更何を大騒ぎする必要があるの?」

いえいえ、今でも大きな問題ですよ。英国でエクスタシーが本格的に流行し始めたのは、1987年から1988年になってですから。そしてすべてを変えてしまったんです。
「つまり、あなたたちいまだにスペシャルKじゃなくて“エクスタシー”をやってるってこと?だってアメリカじゃ今やケタミンがナンバー・ワン・ドラッグなのよ。Kのエアポケットにはまったら最後、幽体離脱体験がはじまるの。朝になったらちゃんと目覚めるなんて考えない方がいいわよ。でも確かにこのアルバムは、ドラッグをやりながら聴くと最高だと思う。Kのエアポケットにはまった気分にさせられるでしょうからね。狂乱の世界に駆り立てられるでしょう。ミックスが終わったトラックをいくつかマイアミのリキッドに持って行ったときも、DJたちが狂気してくれたわ。ハイになりながらあのアルバムを聴くとどんな感じがするか、容易に想像がつくのよ。だけどわたしはドラッグの力を借りずに自力でハイにならなきゃ。(あどけない口調でおどけながら)今のわたしには子供がいるんですもの。そういった類のことはできないわ」

映画『イン・ベッド・ウィズ・マドンナ』は、あなたのマイナス・イメージを広く植え付けた決定的な作品となりましたが、あれほどの大博打に出たアーティストはそれまで誰もいませんでしたよね。自分がどう見られていようが全く怖くない、という感じで・・・・
「ブスに見えていても、ってことでしょ?」

あと、利己的に見えていても・・・・。
「ナルシストに見えていても・・・・・」

・・・・そういったことすべてです。そして、誰があの映画を観ようがあなたは意に介さなかった。
「でも、ああいう側面を見せないつもりなら、ドキュメンタリーなんて作っても意味が無いじゃない。それじゃドキュメンタリーじゃないでしょ?この現実を直視しましょうよ・・・・ツアー中の・・・・呼び名はどうであれ、このあたしの・・・・・生活を知りたければ、そのすべての側面を見なきゃ意味が無いのよ。あれでこそ、実生活の断面を本当に写しだしていて、ステージ上の乱痴気騒ぎや、あの機能不全人間達と旅することの狂気の沙汰を、嘘偽りなく描いてる。フィクション映画にしたって、登場人物の欠点が見えてこなきゃその人間に感情移入なんてできないでしょ?」

それにしても欠点を見せ過ぎたとは思いませんか?
「そんなにたくさん出てたかしら。わたしもあの映画を観ると『いやだ、あたしったら何て短気なの!?』とか『まあ、何てじゃじゃ馬!』って思うわよ。でもだからといって怖くなったりはしないわよ。あれがあの時のわたしだったんだしあれ以降わたしもすごく成長したから」

ではあなたが思うマドンナのベスト・レコードというと何になります?
「『ライク・ア・プレイヤー』はかなりいい線いってるわね。あとわたしは『ベッドタイム・ストーリーズ』がすごく気に入ってるの。あのアルバムが“わかった”人ってあんまりいないと思うけど」

『エロティカ』よりはいい出来でしたよ。あの時のあなたは、コンセプト・アルバムを作ろうとして自分で自分の脚を縛ってましたよね。
「まったくその通りだわ。身のほど知らずのことをやろうとしちゃったのよ。だけど『ベッドタイム・ストーリーズ』は、感触は『エロティカ』に似てたけど曲の出来はずっとよかった。でもやっぱり今回のレコードがこれまでで一番好きよ」

あなたはかつて「わたしの中では、情熱とセクシュアリティーそして宗教は、全部一つに溶け合っているの」と語ってましたよね。で、“ライク・ア・プレイヤー”のビデオでセクシーな黒人のキリストを愛撫し、また今作の“シャンティ/アッシュタンギ”では、サンスクリット語の祈りに強いビートを加え、その高いテンションをアルバムの頂点に持ってきてるわけですが、自分の考えや意見を広めるのには、やはり宗教という要素を取り入れるのがベストなんでしょうか?
「もちろんよ。わたしはすべての道は神に通じてると固く信じているの。あちこちで宗教戦争がおきてるのは情けないことだわ。だってどの宗教も、メッセージの多くの部分は同じなんですもの。カルマにしても“自分がされたいことを他者になせ”っていうのにしても、考え方はみんな同じなのよ。本当にそうなの」

今回のアルバムは“スウィム”にしても“マー・ガール”にしろ“ドラウンド・ザ・ワールド”にしろ、水のイメージが大きな位置を占めていますね・・・。
「だって、水がすごく癒しのある効果のある要素なのはあなたも知ってるでしょ?だって、誕生にも水は欠かせないし洗礼にも水は欠かせないし、お風呂につかったり海に入ったりした時って何だか洗い清められるような、もう一度始めからやり直すような感じがするじゃない?新しく生まれ変わるような、癒されたような感じがね。ある意味でそれがわたしの今の状況だし、曲作りのなかでもその要素を探求しようとしているの」

なるほど。で、“スウィム”でずばり贖罪について歌っていますが、あなたは何故このテーマにそこまでこだわるんですか?自分が、何かそうしなきゃならないほどの悪行を重ねてきたと思ってるんですか?
「この曲は、わたしのことを歌ってるだけじゃないのよ。他の人たちにも贖罪を求めるように懇願している曲でもあるの。何故ならそれこそまさに、今世界で起きている事に対する応答でもあるからよ」

今起きているとことというと、具体的には?
「(皮肉たっぷりに)つまりガリアーノの次期コレクション以外でってこと?そうねえ、いろんなことが気がかりよ。でも一番の心配は、人々がネガティブに取り憑かれてるってことなんじゃないかしら。みんなすごく不機嫌で敵意むきだしで、他人がうまくやっているとものすごく嫉妬するでしょ。昔はみんなもっとお互い話をしたし、もっと機知に富んで創造力豊かだったのに。ところがテレビとコンピュータが・・・わたしたちが暮らすこのインスタント社会が、その能力を大半の人間から取り去ってしまったのよ。自分の運命に忍従してしまってる人間が、最近は多過ぎるわ」

どうして、今になってそういう考え方をするようになったのでしょう?
「確かに同じような恐ろしい状況が,世界ではずっと以前から起こっていたのかもしれないし、単にわたしがより注意を払うようになっただけなのかもしれない。ただわたしには、2000年近づくにつれて人間の行動がより極端になってきているように思えて仕方ないのよ。二つのグループに分かれているような気がするの。『大金稼いで楽しんでそれで終わりだ』という人間と、精神的な拠り所を探し求め、自分の中の良心を成長させて、人生のより大きな意味を見つけ出そうとしている人間の、その二つにね。だけど、一方では、自殺する10代の子供の話とか我が子を殺した親の話とか、もっぱらそういうニュースを読んでいないような気もしてるんだけど」

闇のような絶望感というのを経験したことはありますか?
「ちょっとや・め・て・よー!わたしが“絶望の女王”だってことを知らないの?わたしの歌詞をちゃんと読んでる?人生で絶望を感じたことは何度もあるわ。ただわたしって、すごくいいサバイバル法を身に付けてるだけよ。どんなに状況が悪くなっても、人生を完全に絶望視してしまいそうになるのを引き止めてくれる“何か”があるの。だから、もちろん今でもすごく憂鬱な気分に耽ってしまうことはあるのよ

それはどうやって克服してるんですか?
「曲を書くこともあるわ。あと、わたしをそこから抜け出させてくれる人たちと一緒に過ごしたりね・・・わたしの娘や、『お前は馬鹿だ』とちゃんと言ってくれる友達のことよ」

では、マイケル・ハッチェンスがどれほど暗い闇に陥ってしまっていたのか、想像したことはあります?
「わたしもそのことは考えたわ。真相はわたしにはわからないけど、とにかく悲惨な、悲惨極まりない出来事だった。そこまでいってしまう状況っていうのが、わたしには想像ができいの。想像してみようとしたんだけど、できなかった。“死とは何か”を想像しようとしてもできないのと同じよ。子供がいれば、何が起きようともその子のために頑張ろうとできるんじゃないかって、わたしなんかは思うんだけど。でもわからない。彼の立場に身を置いたわけじゃないから」

どうせ仕事のことはプロデューサー任せなんだろう、という周囲の憶測には怒りを憶えますか?また、そういうことで言えば、マーヴェリックは遊び道具のようなものであなたはほとんど日常的関わりを持っていない、という噂も流れてますよね。
「そういう憶測についてはあまり考えないようにしてるの。だって、知ってる人はちゃんと知ってくれているわけで、重要なのはそれだけだから。プロディジーの連中も知ってくれてるし、わたしのレーベルに来る人はみんな知ってくれてるし、わたしのアルバムで仕事してくれる人もみんな実際の状況を知ってくれている。そういう憶測を言う人って、熱狂的性差別主義者なのよ。(にやにや笑って)わたし、100%正確とは言えない事を言う連中にはすっかり慣れっこになってるの」

あなたの歌声はかつては“キイキイ甲高い”と批判されたものですが、今回のレコードに関しては誰にもそんんなことは言えませんね。
「『エビータ』をやってて自分本来の声を見つけたの。ヴォーカル・コーチについて徹底的に研究したからよ。そして、自分にあると思ってもいなかった声域や声質を発見したの。それまでは、その中のほんのわずかしか使っていなかったのよね。それにしてもいい拾い物をしたわ」

今でもドラムはプレイしてるんですか?スタジオに置いてあるドラム・セットを見て、「試しに叩いてみよう」と思ったりします?
「密かにそう願ってるの。ホリデイ・インとかどこかでバンドがプレイしているところに偶然ぶつかって『わたしのほうがうまいわ』と思ったこともある。だからいずれそのうちね。もしかしたらツアー先で、リハーサルを終えてみんなステージからいなくなった後、誰かが床を掃除している横でドラムを叩いてるわたしをきっと見かけるはずよ」

あなたを恐れている人間が、今やただの一人もいないというのは、あなたが変わった事の証拠なんでしょうか、それとも周囲の人間が変わった事を反映しているんでしょうか?「マドンナ、衝撃の肉体!」などというセリフも最近じゃ新聞の見出しにもなりそうにもありませんよね。
「(にやっと笑って)もうお見せできるモノが一つも残ってないと思うんだけど、どうかしら?」

あっても見せる必要がなくなったんじゃないですか?つまりあなたの勝ち、だと。
「確かにわたしが勝ったんでしょうね。あの大混乱の中でいくらかでもポジティブなメッセージが伝わったんだとしたら、わたしの勝ちだわ。でも、反逆者や開拓者でいるのって、それほど楽しいものでもないってことは言っておかないとね。何故なら誰もわたしを恐怖の対象にしちゃうからよ。かなり立ち直りの早い性格でなきゃとてもやっていけないし、わたしですら、こんなズケズケものを言う性格じゃなきゃよかった、って思ったことが何度かあるもの。常に自分を弁護しなきゃならないのって、本当に疲れるものよ。でも振り返って考えると、自分にとってすごくいい勉強になったしあれですごく自由になれたとも思うわ。というのは、自分があらゆる意味で不人気で、あらゆる人間に食ってかかられた時って、逆に何でも好きなことをやれる自由があるように思うのよ・・・だって、すべての人間をよろこばせてなくてもいいわけだから。この際、現実を認めましょうよ・・・・わたしが何年もずっと言い続けてきたことを、ようやく世間も受け入れられるようになったんだってことを。今じゃそれほど突飛な話じゃなくなってきてるでしょ。人間ってそういうものなのよ。時代を減るqごとに、いろんな考え方に対してどんどんオープンになっていくものなの。ホモセクシュアリティだって、今じゃポップ・カルチャーの世界で議論にもならないけど、たった10年前にはおそろしく不埒なものと考えられていたのよ。よくここまで来たものだと思うわ。でもわたし自身も変わったし、だから両方変化したって事よね」

つまりあなたは人類の進歩を信じていると?
「(少しむっとして)もちろん信じてるわよ!だからこそわたしたちは存在するんですもの。自分、そして他の人たちを変えるためにね。進歩は我々の種の本質なのよ」

わかりました。では、最後にあなたは今の自分にかなり満足してるようですが、逆にいまだに達成できずくやしい思いをしている野望などといったものはあるんでしょうか?
「絵を習いたいとは思ってる。わたしは絵画が大好きだし、絵が描ける人たちにはいつも畏敬の念を抱いているのよ。じゃあ自分でもさっさと描けばいいじゃないか、ってみんな言うんだけど『だめよ。だってもしひどい出来だったら?すごく落ち込んじゃうに決まってるわ!』って考えちゃうから」



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